NETWORK DESIGN / 04
Routing・Securityはどう設計する?
通信経路とFirewall Policyの基本
ネットワーク設計シリーズ第4回。VLANとIPアドレスを決めた後は、通信をどの経路へ流し、どの通信を許可・拒否するかを設計します。本記事では、実際の検証環境で作成した設計書の構成を一般化しながら、Routing、Default Route、Security Zone、Firewall Policy、Traffic Flowをどのように整理するかを解説します。
NETWORK DESIGN SERIES
ネットワーク設計シリーズ
ネットワーク機器の知識を、設計書・構成図・設計項目へ落とし込む方法を整理します。
Routing・Security設計とは
Routing設計は「通信をどこへ送るか」を決め、Security設計は「その通信を許可するか」を決めます。どちらか片方だけでは、ネットワーク全体の通信要件を表現できません。
設計書では、経路、Next Hop、Security Zone、Source / Destination、Service、Action、Logなどを分けて整理し、最後にTraffic Flowで通信全体を確認します。
宛先Network、Next Hop、Default Routeなどを整理します。
Zone、Address、Serviceを条件に許可・拒否を設計します。
RouteとPolicyをつなげ、通信が成立するかを確認します。
1. 最初にRouting方式を決める
第1回で紹介した設計書では、Routing方式としてStatic Routingを採用し、インターネット向け通信にはDefault Routeを利用する方針を整理していました。
Routing Method
Static Routing
Internet Traffic
Default Route
Internal Networks
Destination NetworkごとにNext Hopを定義
重要なのは、個別コマンドを書く前に「どの方式で経路を管理するか」を設計として決めておくことです。構成規模や冗長化要件によっては動的Routingを選ぶ場合もありますが、記事ではベース資料に合わせてStatic Routingを中心に扱います。
2. 宛先NetworkとNext Hopを表で整理する
Static Routingでは、どの宛先をどのNext Hopへ送るのかを表にしておくと、機器設定とレビューを行いやすくなります。
| Destination | Next Hop | 用途 |
|---|---|---|
| 192.0.2.0/24 | 198.51.100.1 | User Network |
| 203.0.113.0/24 | 198.51.100.2 | Management Network |
| 0.0.0.0/0 | WAN Router | Internet / Other Destinations |
公開記事ではDocumentation用アドレスを使用しています。実環境では、経路の重複、より具体的なRouteの優先、冗長化時の経路切り替えなども確認します。
3. Default Routeの出口を明確にする
インターネットなど個別Routeを持たない宛先へ通信する場合は、Default Routeを利用します。設計書では、どの機器がDefault Routeを持ち、どこをNext Hopにするかを明確にします。
Networks
Next Hop
External Network
Default Routeは便利ですが、通信の出口をまとめるため、FirewallやNATの配置と合わせて考える必要があります。
4. Security Zoneで通信境界を整理する
ファイアウォールでは、InterfaceやNetworkをSecurity Zoneへ所属させ、Zone間の通信としてPolicyを設計します。
| Zone | 主な対象 | 役割 |
|---|---|---|
| Trust | Internal Network | 内部ユーザーやサーバー側 |
| Untrust | WAN / Internet | 外部ネットワーク側 |
| DMZ | 公開Server | 内部と外部の中間領域 |
| MGMT | Management Network | 管理用通信を分離する領域 |
Zone名は製品や組織の設計基準によって異なりますが、「どのNetworkがどの信頼境界に属するか」を明確にすることが重要です。
5. Firewall Policyは条件を表形式で整理する
第1回で紹介した設計書では、Source Zone、Destination Zone、Source Address、Destination Address、Service、NAT、Log、ActionをPolicy表として整理していました。
Src Zone | Dst Zone | Src Addr | Dst Addr | Service | NAT | Log | Action
Trust | Untrust | USER-NET | Internet | HTTPS | - | ALL | Accept
Trust | Untrust | ALL | ALL | ALL | - | ALL | Deny
Policyは「通信できるか」だけでなく、誰が・どこから・どこへ・何の通信を行うかを設計として表すものです。レビューしやすいよう、許可Policyと拒否Policyの意図が追える形にします。
6. NATはRouting・Policyと分けて整理する
NATを利用する構成では、経路設計やSecurity Policyと同じ表へ情報を詰め込みすぎず、必要に応じてNATの変換条件を別に整理します。
| 確認項目 | 設計で見る内容 |
|---|---|
| Original Source | どのNetworkからの通信を変換対象にするか |
| Original Destination | どの宛先向け通信か |
| Translated Address | どのアドレスへ変換するか |
| 適用位置 | Router / Firewallなど、どの装置でNATするか |
7. Traffic FlowでRouteとPolicyをつなげる
Routing表とFirewall Policy表を別々に作った後は、代表的な通信をTraffic Flowとして追います。これにより、経路上で必要なRouteとPolicyが揃っているかを確認できます。
Gateway
Route / Policy
Internet
- 送信元のGatewayから次のHopへRouteが存在するか
- Firewallで必要なZone間Policyが許可されているか
- NATが必要な場合、想定した装置で変換されるか
- 戻り通信が成立する経路になっているか
- ログで通信結果を確認できる設計になっているか
8. 設計レビューは「経路」と「許可条件」を分けて確認する
通信できない原因はRoutingにある場合もあれば、Firewall Policyにある場合もあります。設計レビューでもこの2つを分けて確認すると、抜けを見つけやすくなります。
| 観点 | 確認内容 |
|---|---|
| Routing | Destination、Next Hop、Default Route、戻り経路 |
| Security | Zone、Source / Destination、Service、Action、Log |
| NAT | 変換対象、変換先、実施装置 |
| Traffic Flow | 通信経路上のRoute / Policy / NATの整合性 |
まとめ
Routing設計では通信の行き先を決め、Security設計ではその通信を許可する条件を決めます。設計書では、Route、Security Zone、Firewall Policy、NAT、Traffic Flowをそれぞれ整理し、最後に一連の通信として確認します。
「VLAN / IP → Gateway → Route → Security Policy → Traffic Flow」の順でつなげると、設計内容と機器設定の対応関係を追いやすくなります。
これで、ネットワーク設計シリーズ #01〜#04として、設計書の全体像から構成図、VLAN・IP、Routing・Securityまで一通りつながる構成になります。
記事について
本記事は、Stractoが保有していたネットワーク検証環境の設計書に含まれるRouting、Security Zone、Firewall Policy、Traffic Flowの項目を基に、公開可能な内容へ一般化して構成しています。