NETWORK DESIGN / 02
物理構成図と論理構成図はどう書き分ける?
ネットワーク図の基本を実例から整理
ネットワーク設計シリーズ第2回。ネットワーク図には、機器・ポート・配線を表す「物理構成図」と、VLAN・IPセグメント・Gateway・通信関係を表す「論理構成図」があります。本記事では、実際の検証環境で作成した設計書を一般化しながら、2つの図をどう使い分けると分かりやすいかを整理します。
NETWORK DESIGN SERIES
ネットワーク設計シリーズ
ネットワーク機器の知識を、設計書・構成図・設計項目へ落とし込む方法を整理します。
物理構成図と論理構成図の違い
物理構成図と論理構成図は、同じネットワークを異なる視点から表したものです。物理構成図は「何が、どこに、どう接続されているか」を確認するための図で、論理構成図は「どのネットワークに属し、どの経路で通信するか」を確認するための図です。
機器、ポート、リンク、速度、冗長化などを表します。
VLAN、Subnet、Gateway、L3境界などを表します。
構築・レビュー・障害切り分けで、2つの図を相互に参照します。
1. 物理構成図に書くもの
物理構成図では、ネットワーク機器同士が実際にどのポートで接続されているかを中心に整理します。今回ベースにした設計書でも、コアスイッチ、アクセススイッチ、ルータ、ファイアウォール、無線APなどを配置し、それぞれの接続ポートとリンク速度を記載していました。
- 機器名・役割:Core Switch、Access Switch、Router、Firewall、APなど
- 接続ポート:Gi1/0/1、WAN1、Port1など
- リンク速度:100M、1G、10Gなど
- リンク本数:LAGやEtherChannelなど、複数リンクの束ね方
- 接続先:どの機器のどのポートとつながっているか
Core-SW Gi1/0/1
│ 1Gbps
│
Access-SW Gi1/0/24
Firewall Port1
│ 1Gbps x2 / LAG
│
Core-SW Gi1/0/23-24
障害時に「どのケーブル・ポートを確認するか」をすぐ判断できるように、ポート番号やリンク速度は物理構成図へ集約しておくと便利です。
2. 論理構成図に書くもの
論理構成図では、物理ポートよりもVLAN、IPセグメント、Gateway、Firewall境界などの通信上の関係を整理します。今回の設計書では、管理用・ユーザー用・Firewall接続用など複数のネットワークを色分けし、それぞれのアドレス帯と主要なL3接続を示していました。
- VLAN ID:どの論理ネットワークに属するか
- IP Subnet:192.0.2.0/24 などのネットワーク範囲
- Gateway:各SubnetのL3終端
- L3接続:Core、Firewall、Router間のTransit Network
- 外部接続:Internet、Cloud、VPNなど
VLAN 10
User Network
192.0.2.0/24
GW 192.0.2.254
│
Core SW
│
Transit Network
198.51.100.0/24
│
Firewall
│
Internet
論理構成図では、通信を理解するために必要な情報へ絞ることがポイントです。細かな物理ポート番号まで入れ始めると、物理図と情報が重複し、図が読みづらくなります。
3. どちらに何を書くかを決める
| 項目 | 物理構成図 | 論理構成図 |
|---|---|---|
| 機器名 | ○ | ○ |
| 型番 | 必要に応じて記載 | 通常は省略可能 |
| Interface / Port | ○ | 必要最小限 |
| Link Speed | ○ | 通常は省略 |
| VLAN ID | 必要に応じて | ○ |
| IP Subnet | 通常は省略 | ○ |
| Gateway | 通常は省略 | ○ |
| LAG / Redundant Link | ○ | 構成上必要なら記載 |
4. まず物理、次に論理の順で作る
ゼロからネットワーク構成を整理する場合は、最初に機器と接続関係を物理構成図として描き、その上でVLANやIPセグメントを論理構成図へ落とし込むと整理しやすくなります。
物理接続
論理分割
通信設計
この順番にすると、「このVLANはどの物理リンクを通るのか」「このFirewall接続はどのTransit Networkを利用するのか」といった対応関係を確認しながら設計できます。
5. ラベルは後工程で使う情報を優先する
構成図には多くの情報を載せられますが、すべてを書くと逆に見づらくなります。設計・構築・運用で実際に確認する情報を優先してラベルを付けると、使いやすい図になります。
| 用途 | あると便利な情報 |
|---|---|
| 構築 | 機器名、Interface、VLAN、Subnet |
| レビュー | 役割、Zone、Gateway、冗長構成 |
| 障害切り分け | Port、Link Speed、経路、管理ネットワーク |
| 引き継ぎ | 機器役割、Network用途、主要な通信経路 |
例えば、物理図で「Gi1/0/24」と「1Gbps」、論理図で「VLAN 10 / 192.0.2.0/24」といったように、図の目的に合う情報だけを残すと確認が楽になります。
6. VLANや経路を色分けする
複数のネットワークが混在する場合は、VLANや通信系統ごとに色を分けると関係を追いやすくなります。今回の設計書でも、管理ネットワークや各Firewall系統などを色分けし、同じ色の経路を追うことで通信関係を把握できる構成になっていました。
Blue : Management Network
Red : User / Internet Network
Green : Firewall Transit
Purple : Service / Development Network
色だけに依存すると印刷時や閲覧環境によって区別しづらくなるため、VLAN IDやNetwork名も併記しておくと安全です。
7. 2つの図をセットでレビューする
物理構成図と論理構成図は別々に作りますが、レビューではセットで確認します。特に、物理リンクと論理ネットワークの対応がずれていないかを確認すると、構築時の設定ミスを減らしやすくなります。
- Trunkで必要なVLANが通る構成になっているか
- LAGのMember Portが物理図と一致しているか
- FirewallのTrust / Untrust側が論理図と一致しているか
- GatewayとRoutingの向きが論理図上で追えるか
- 管理ネットワークから各機器へ到達できる構成になっているか
構築前に「物理的につながるか」と「論理的に通信できるか」を別々の図で確認しておくことで、現地作業や設定投入時の確認項目も整理しやすくなります。
設計を楽にする実務的なまとめ方
構成図は完成形を最初から細かく描くより、まず大枠を作ってから必要な情報を追加していく方が進めやすくなります。
物理図では「接続が分かること」、論理図では「通信が分かること」をゴールにすると、必要な情報を判断しやすくなります。また、構成変更が発生したときも、物理変更なのか論理変更なのかを分けて更新できるため、設計書の保守も楽になります。
まとめ
物理構成図は機器・ポート・リンクを確認するための図、論理構成図はVLAN・Subnet・Gateway・通信関係を確認するための図です。同じ情報を両方へ詰め込まず、それぞれの役割を分けることで読みやすくなります。
「物理接続 → VLAN / IP → Routing / Policy」の順で設計を進め、2つの図をセットでレビューすると、設計から構築、障害切り分けまで使いやすい資料になります。
次回は、ネットワーク設計の中でも設定へ直結する「VLAN・IPアドレス設計のまとめ方」を取り上げます。
記事について
本記事は、Stractoが保有していたネットワーク検証環境の設計書に含まれる物理概要図・論理概要図を基に、公開可能な内容へ一般化して構成しています。