NETWORK BASICS / 03

ルータとは?
役割と基本設定を実際のネットワーク構成から解説

ネットワーク基礎シリーズ第3回。ルータは、異なるネットワーク同士を接続し、宛先に応じて通信経路を選択する機器です。本記事では、Stractoの検証環境で使用しているCisco 891FJの実設定を一般化しながら、ルーティング、PPPoE、NAT/PAT、ACLなどの基本を整理します。

公開日:2026.09.18 読了目安:8分 ネットワーク基礎シリーズ 第3回 Stracto Technical Lab

NETWORK BASICS SERIES

ネットワーク基礎シリーズ

ネットワークを構成する主要機器を、実際の構成・設定例を交えながら順番に解説します。

#01 / PUBLISHEDコアスイッチ
#02 / PUBLISHEDアクセススイッチ
#03 / CURRENTルータ
#04 / NEXTファイアウォール

ルータとは

ルータは、IPアドレスを基に異なるネットワーク間の通信を中継する機器です。LAN内の端末からインターネットへ出る通信や、複数セグメント間の経路制御などで利用されます。

スイッチが同一ネットワーク内の接続を中心に担うのに対し、ルータは「どの宛先へ、どの経路を使って送るか」を判断する役割を持ちます。

POINT 01異なるネットワークを接続

LAN、WAN、各種セグメント間の通信を中継します。

POINT 02経路を選択

ルーティングテーブルを参照し、宛先ごとに次の転送先を決めます。

POINT 03外部接続を担当

PPPoEやNAT/PATを使い、内部ネットワークをインターネットへ接続できます。

ネットワークの中でどこに置かれるのか

Stractoの検証環境では、Cisco 891FJをインターネットルータとして使用しています。内部側では複数のファイアウォール向けネットワークを収容し、外部側ではPPPoEを使ってインターネット回線へ接続する構成です。

この構成では、ルータが各内部ネットワークへの戻り経路を保持し、インターネット向け通信はデフォルトルートでWAN側へ転送します。

実務上のポイント:ルータは単に「インターネットにつなぐ機器」ではありません。経路、NAT、WAN接続方式、ACLなどを組み合わせ、内部ネットワークと外部ネットワークの境界で通信を正しく中継します。

L3スイッチ・ファイアウォールとの違い

項目ルータL3スイッチファイアウォール
主な役割異なるネットワーク間の経路制御LAN内部の高速なL3転送通信の許可・拒否とセキュリティ制御
主な利用場所LANとWANの境界、拠点間社内LANのコア・ディストリビューションTrust / Untrust / DMZなどの境界
NAT対応する機種が多い用途による一般的に利用される
セキュリティ制御ACLなどで可能ACLなどで可能ポリシー制御が中心機能

ルータで必要になる基本設定

StractoのCisco 891FJでは、管理インターフェース、内部側VLAN、PPPoE、スタティックルート、NAT/PAT、ACL、CBAC、SSH、NTP、Syslog、SNMPなどを設定しています。

  • LAN / WANインターフェース:内部側と外部側の接続先を定義する
  • ルーティング:宛先ネットワークごとの転送先を設定する
  • デフォルトルート:個別経路がない通信の出口を定義する
  • PPPoE:ISPへの接続に必要なDialerインターフェースを構成する
  • NAT / PAT:内部アドレスを外部アドレスへ変換する
  • ACL:管理通信やWAN側の受信通信を制御する
  • 状態管理:必要に応じて戻り通信を動的に許可する
  • SSH / NTP / Syslog / SNMP:安全な管理と運用監視を行う

スタティックルートとデフォルトルート

ルータはルーティングテーブルを基に、宛先IPアドレスに応じて次の転送先を決定します。小規模な構成では、経路を手動で定義するスタティックルートが分かりやすく、運用もしやすい場合があります。

CONFIG EXAMPLE — STATIC ROUTE
ip route 192.0.2.0 255.255.255.0 198.51.100.1
ip route 203.0.113.0 255.255.255.0 198.51.100.2

Stractoのルータでは、内部の各ネットワークに対して複数のスタティックルートを設定し、ファイアウォール側のアドレスをNext Hopとしています。

デフォルトルート

CONFIG EXAMPLE — DEFAULT ROUTE
ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 Dialer1

0.0.0.0/0は、より具体的な経路が存在しない宛先に対して使用されます。Stractoのルータではインターネット向けのデフォルトルートをPPPoE用Dialerインターフェースへ向けています。

PPPoEによるインターネット接続

Stractoの検証環境では、物理WANポートでPPPoEを有効化し、実際のIPアドレスやPPP認証はDialerインターフェース側で処理する構成です。

CONFIG EXAMPLE — PPPoE
interface GigabitEthernet8
 description *** TO-INTERNET ***
 pppoe enable group global
 pppoe-client dial-pool-number 1
!
interface Dialer1
 mtu 1492
 ip address negotiated
 encapsulation ppp
 dialer pool 1
 ppp authentication chap callin
 ppp chap hostname example-user
 ppp chap password 0 ********

PPPoEではEthernet上にPPPセッションを確立します。実環境のユーザー名やパスワードは認証情報にあたるため、公開記事では必ずサンプル値へ置き換えます。

NAT / PATの設定

プライベートIPアドレスを利用する内部ネットワークからインターネットへ接続する場合、NATを使ってアドレスを変換します。1つのグローバルIPアドレスを複数端末で共有する方式がPATです。

CONFIG EXAMPLE — NAT / PAT
access-list 100 permit ip 192.168.10.0 0.0.0.255 any
!
interface Vlan10
 ip nat inside
!
interface Dialer1
 ip nat outside
!
ip nat inside source list 100 interface Dialer1 overload

Stractoのルータでは、複数の内部セグメントをACLで指定し、overloadを利用してDialerインターフェースのアドレスへPATしています。

ACLと状態管理

ルータでもACLを利用して、管理通信やWAN側からの受信通信を制御できます。Stractoのルータでは、WAN側に受信ACLを適用し、必要な通信のみを明示的に許可し、それ以外を拒否する構成です。

CONFIG EXAMPLE — WAN ACL
ip access-list extended WAN-IN
 permit udp host 203.0.113.10 eq ntp any
 deny ip any any log
!
interface Dialer1
 ip access-group WAN-IN in

CBACによる戻り通信の制御

StractoのルータではCBAC(Context-Based Access Control)も利用しており、TCP、UDP、ICMP、NTPなどの通信を検査し、内部から開始した通信の戻りトラフィックを動的に扱う構成です。

CONFIG EXAMPLE — CBAC
ip inspect name CBAC tcp
ip inspect name CBAC udp
ip inspect name CBAC icmp
!
interface Dialer1
 ip inspect CBAC out
補足:CBACはCisco IOSの従来型ステートフルファイアウォール機能です。現在の新規設計では、専用ファイアウォールやZone-Based Firewallなど、機種・要件に応じた方式を選択します。

管理・監視のための設定

ルータはネットワークの出口を担うため、管理経路と監視も重要です。Stractoのルータでは、専用の管理インターフェースにIPアドレスを設定し、SSHによる管理、NTP、Syslog、SNMPを利用しています。

CONFIG EXAMPLE — SSH MANAGEMENT
ip ssh version 2
!
line vty 0 4
 access-class MGMT in
 login local
 transport input ssh

管理ACLを使って接続元を限定することで、管理端末以外からのSSH接続を抑止できます。

NTPによる時刻同期

CONFIG EXAMPLE — NTP
clock timezone JST 9 0
ntp server 203.0.113.20 prefer

Stractoのルータでは外部NTPサーバと同期し、自身を内部向けNTPサーバとして利用する設定も行っています。ルータ、スイッチ、ファイアウォールの時刻を揃えておくことで、障害発生時に各機器のログを時系列で追いやすくなります。

まとめ

ルータは、異なるネットワーク間の通信経路を制御し、LANとWANをつなぐ役割を持つ機器です。インターネット接続では、ルーティングだけでなくPPPoE、NAT/PAT、ACLなど複数の機能を組み合わせることがあります。

StractoのCisco 891FJでは、スタティックルート、デフォルトルート、PPPoE、PAT、ACL、CBAC、SSH、NTP、Syslog、SNMPなどを利用しています。

本記事は「ネットワーク基礎シリーズ」の第3回です。次回はファイアウォールを取り上げ、Security Zone、Policy、NAT、通信制御などの基本を解説します。

記事について

本記事は、Stractoのネットワーク検証環境におけるCisco 891FJの実機設定ログを基に、公開可能な内容へ一般化・匿名化して構成しています。

掲載しているコンフィグ例では、実際の設定パターンを参考にしつつ、IPアドレス、PPPoE認証情報、ユーザー名、パスワード、SNMP Community、管理アドレスなどをサンプル値へ置き換えています。実環境へ適用する場合は、利用機種・IOSバージョン・ISP・ネットワーク設計に合わせて確認してください。