Cloudflare Zero Trustとは
Cloudflare Zero Trustは、ユーザーや端末から社内アプリケーション、SaaS、インターネットへのアクセスを、クラウド上のポリシーで制御するための仕組みです。
従来の「社内ネットワークに接続していれば一定程度信頼する」という考え方ではなく、アクセスのたびにユーザーや端末の条件を確認し、必要なリソースだけへ接続させる設計を取りやすくなります。
IdPと連携し、誰がアクセスしているのかを確認します。
管理端末、OS、暗号化、セキュリティ状態などを条件にできます。
社内アプリだけでなく、インターネット向け通信にもポリシーを適用できます。
従来のVPN・ファイアウォールとの違い
| 項目 | 従来型VPN / Firewall | Zero Trust構成 |
|---|---|---|
| 信頼の基準 | 接続元ネットワークやVPN接続を重視 | Identity、Device、Applicationなど複数条件 |
| 社内アプリへの接続 | VPNで社内ネットワークへ接続後にアクセス | 対象アプリ単位で認証・認可 |
| 端末条件 | VPN装置や別製品で確認する場合がある | Device Postureをアクセス条件へ組み込み可能 |
| Internet制御 | 拠点FirewallやProxyを経由 | Secure Web Gatewayでユーザー単位の制御が可能 |
一般的な企業向け構成
一般的な構成では、企業端末へCloudflare One Clientを導入し、ユーザー認証にはMicrosoft Entra ID、Okta、Google WorkspaceなどのIdentity Providerを利用します。社内WebアプリはCloudflare Accessで保護し、インターネット向け通信はGatewayで制御します。
Managed Device
Posture / Gateway
SaaS / Internet
ユーザー認証とグループ情報をAccessやGatewayのポリシー条件に利用します。
端末からCloudflareへ通信を送り、WARP / Gateway接続やDevice Postureの判定に利用します。
社内Webアプリなどに対して、ユーザーと端末条件を満たすアクセスだけを許可します。
DNS、HTTP、Network Policyを使ってインターネット向け通信を制御します。
Identity Providerによるユーザー認証
最初に重要になるのが「誰がアクセスしているか」を確認する仕組みです。Cloudflare Accessでは、既存のIdentity Providerと連携してユーザーを認証し、メールアドレス、グループ、認証方式などをアクセス条件に利用できます。
Action: Allow
Include:
Email domain = @example.com
Require:
Identity Provider = Corporate IdP
企業で既にMicrosoft Entra IDなどを利用している場合は、新しいユーザー管理基盤を別に作るのではなく、既存のIdentity Providerと連携する構成が一般的です。
Cloudflare One ClientとWARP
管理端末へCloudflare One Clientを導入すると、端末からの通信をCloudflare Zero Trustへ送ることができます。これにより、ユーザー単位のGateway PolicyやDevice Postureを利用しやすくなります。
Cloudflareのポリシーでは、WARPに接続しているか、組織のGateway経由で接続しているかといった条件もAccess Policyへ組み込めます。
Action: Allow
Include:
Group = Employees
Require:
Gateway = Connected
Device Posture = Corporate Device
Device Postureで端末状態を確認する
ユーザー認証だけでは、同じアカウントを使って私物端末からアクセスされる可能性があります。Device Postureを利用すると、端末が企業のセキュリティ要件を満たしているかをAccess PolicyやGateway Policyの条件にできます。
- 対応OS・OSバージョン
- Disk Encryptionの状態
- Antivirus / Endpoint Securityの状態
- Cloudflare One Client / Gateway接続状態
- 端末証明書やSerial Numberなどの管理端末判定
Cloudflare Accessで社内アプリを保護する
Cloudflare Accessは、社内Webアプリケーションなどへのアクセスを認証・認可するZTNAの機能です。Access PolicyではAction、Include、Require、Excludeなどを組み合わせて条件を作ります。
Application:
internal.example.com
Action:
Allow
Include:
Group = Employees
Require:
Gateway = Connected
Device Posture = Managed Windows
All other access:
Block
この例では、社員グループに所属し、かつ企業のGatewayへ接続しており、管理端末のPosture条件を満たすユーザーだけが社内アプリへアクセスできます。
Gatewayでインターネット通信を制御する
Cloudflare GatewayはSecure Web Gatewayとして、ユーザーや端末からインターネットへ向かう通信へポリシーを適用します。DNS、HTTP、Network Policyを用途に応じて使い分けます。
DNS Policy
DNS Policyは名前解決の段階でドメインを評価します。Security CategoriesやContent Categoriesを使い、マルウェア、フィッシング、不適切なカテゴリなどをブロックする構成が考えられます。
Action: Block
Selector:
Security Categories
Categories:
Malware
Phishing
Command and Control
HTTP / Network Policy
より細かい制御が必要な場合はHTTP PolicyやNetwork Policyを利用します。URL、Application、Destination IP、Port、Protocol、User Identity、Device Postureなどを条件にできます。
Split Tunnelを設計する
Cloudflare One Clientを導入したからといって、すべての通信を必ず同じ経路へ流す必要はありません。通信特性や既存ネットワークとの関係から、Cloudflare経由にする通信と除外する通信をSplit Tunnelで設計できます。
- Cloudflare経由にする通信の範囲を明確にする
- 除外が必要なSaaSやリアルタイム通信を確認する
- 除外理由を記録し、不要な例外を増やさない
- 変更後は名前解決・Web・Private Accessを個別に確認する
Split Tunnelは「通信できないから除外する」という運用にすると例外が増え続けます。サービス要件とセキュリティ要件を確認した上で設計することが重要です。
Default Denyの考え方
社内アプリやプライベートネットワークへのアクセスでは、「必要なアクセスだけ許可し、それ以外は拒否する」考え方が基本になります。
01 Allow
Employees
+ Managed Device
+ Gateway Connected
-> Internal Application
99 Block
All other access
ただし、GatewayのDNS / HTTP / Network Policyはそれぞれ評価方法や目的が異なります。単純にすべての通信を一括でDefault Denyにするのではなく、保護対象と通信要件を整理し、段階的に適用します。
ログと監視
Zero Trustでは、許可できたことだけでなく「なぜ拒否されたか」を確認できることも重要です。AccessやGatewayのログを確認することで、Identity、Device Posture、Destination、Actionなどの観点から通信を追跡できます。
誰がどのアプリへアクセスし、ポリシーで許可・拒否されたかを確認します。
DNS、HTTP、Network通信がどのPolicyにマッチしたかを確認します。
どの端末条件がPass / Failになっているかを確認します。
Allowケースだけでなく、意図したBlockが機能していることも確認します。
導入は小さな範囲から始める
Zero Trustは機能を一度にすべて導入する必要はありません。最初は影響範囲が明確な社内Webアプリなどから開始し、認証、端末条件、ログ確認の一連の流れを検証する方法が現実的です。
- Identity Providerを接続する
- 検証用の社内Webアプリを1つAccessで保護する
- 少数端末へCloudflare One Clientを導入する
- WARP / Gateway接続を条件に追加する
- Device Postureを1〜2項目から追加する
- DNS Security Policyを追加する
- Allow / Block / Logを確認して対象を広げる
まとめ
Cloudflare Zero Trustでは、Identity Provider、Cloudflare One Client、Access、Device Posture、Gatewayなどを組み合わせ、ユーザーと端末の状態に応じてアクセスを制御できます。
重要なのは、単に製品機能を有効化することではなく、「誰が、どの端末から、どのリソースへ、どの条件でアクセスできるか」を先に設計することです。
ネットワーク基礎シリーズで扱ったSwitch、Router、Firewallの境界制御に加えて、ユーザーと端末を中心にアクセス制御を考えることで、クラウド利用やリモートアクセスを前提としたネットワーク設計へ発展させることができます。
参考情報
本記事は、Cloudflareの公式ドキュメントおよびReference Architectureを参照し、一般的な企業向け構成として整理しています。画面名称、機能、対応条件は変更される可能性があるため、実際の導入時は最新の公式ドキュメントを確認してください。